緑豆チヂミ (녹두 빈대떡)
屋台料理で大人気のピンデトクは、潰した緑豆を焼き上げるチヂミの一種。別名「貧者トク」と言います。その由来は、色々な節がありますが、祭祀のときに高盛する肉料理の下に、ピンデトクを敷いため目立たない料理だったというものから、名前の通り貧しい人が食べた料理とも言われています。一方で、ピンデトクは平安道(ピョンアンド)で良く食べられ、おもてなし料理に使わることが多く、緑豆は値段の高いものだったいう話もあります。
かぼちゃチヂミ (호박전)
エホバッジョンは、朝鮮かぼちゃの卵の付け焼きのこと。酢醤油につけていただきます。淡泊な美味しさと焼きやすさから、エホバッジョンは店でも家庭でもよく作られます。朝鮮かぼちゃの淡泊な味わいを活かして、中心の部分を型抜きし、ひき肉あんや、みじんぎりにしたえびのあんを詰めて焼くこともあります。お祝いの席や、旧正月、お盆の料理に欠かせないジョンの中でも、定番のエホバッジョンは、赤唐辛子の飾り(コミョン)をのせると可愛くなります。
白身魚のチヂミ (생선전)
白身魚のチヂミは、淡泊な白身魚を使った卵の付け焼き。使用する魚に、にべ・鱈・鯛・ぼらなどがあります。魚のチヂミは煎油魚とも言われ、形が美しいことから煎油花とも言われています。旧正月やお盆の料理に欠かせないチヂミ。中でも白身魚は必ず用意されます。卵を付け焼きしただけのものは見た目がシンプルで庶民的ですが、赤唐辛子を型抜きしたものや、春菊を葉っぱにみたてて飾り(コミョン)をのせると、韓定食にだされるようなジョンになります。
海鮮ねぎチヂミ (해물파전)
イカ、海老、ムール貝、あさりなどの海鮮と青ねぎがたっぷりと入ったチヂミ(ジョン)は、韓国の粉食(プンシク)専門店で人気のメニュー。韓国料理の定番になりました。雨が降ると韓国人の多くは、ねぎチヂミを食べたいと言います。一般的には油でこんがりと焼き上げますが、釜山地方の東莱(トンネ)海鮮チヂミは厚みがあり、トロッとしたやわらかい食感で、水ではなく、煮干しのダシを入れて生地を作るため、独特の味わいです。
どんぐり豆腐の和え物 (도토리묵 무침)
冬の寒さが厳しい江原道では、どんぐりも食用にしました。どんぐりのでんぷんを練り上げてゼリーのように固めたものをムッといい、野菜と和えた料理はポピュラーで、飲食店ではおかずとしてよく登場します。あまり食べ物がない時代には特別な料理として作られましたが、カロリーが低く、食物繊維も豊富なため、最近ではダイエット食品として注目されています。昔はムッを自分で作る家庭が多かったのですが、いまは市販のものを使って簡単に和え物を作っています。
タンピョンチェ (탕평채)
タンピョンチェは、でんぷんを練りながら炊いて作ったムクというゼリー状のものがメインの料理。肉類と野菜類がまんべんなく入るので、栄養的に良く、五色の材料が華やかに混ざり合った食べ物です。タンピョンチェは漢字で「蕩平菜」と書き、朝鮮時代の派閥争いに嫌気をさした21代の英祖(ヨンジョ)王が、派に関係なく人材登用をするという「蕩平策」から名付けた料理名で、一方に偏らないという平等主義を料理に込めたのでした。
チャプチェ (잡채)
チャプチェは15代の王様、光海君(クァンヘグン)の宴会で初めて登場したと言われています。朝鮮王朝時代のチャプチェには春雨が入っておらず、千切りにした野菜だけのシンプルなものでした。20世紀に入ると中華料理の影響を受けて、春雨の入った現在の料理に取って代わりました。お祝いの席や、祭りや盆・正月に抜けることなく、膳に上がる食べ物で、色々な野菜を混ぜて作るところからチャプチェ(雑菜)と名付けられました。
きゅうりの酢の物 (오이선)
ソン(膳)と名前のつく料理は、宮廷料理にあたるもので、メイン食材に詰め物をしたり、混ぜこんだりした後に蒸したものを言います。オイソンは、もともときゅうりに詰め物をして蒸し煮をしたあとに、冷たい汁を回しかけていただくものですが、最近はきゅうりをさっと炒めて、最後に甘酢をかけるものが多くなりました。甘酸っぱい味と美しい色により食欲をかきたててくれ、一口サイズで食べやすいことから、前菜としてぴったりです。
宮廷トッポッキ (궁중 떡볶이)
宮廷トッポキは、醤油で味付けして餅と野菜の炒めもので、名前の通り宮廷料理にあたり、お正月用の特別食でした。餅は元々高級食材だったため、庶民の口には入りませんでした。使用する餅はうるち米が原料のため、火を通しても形が崩れず、適度な弾力がクセになります。本来18世紀以前までは醤油で味付けした辛くないトッポッキを主に食べていましたが、1950年代以後、コチュジャンを利用した辛いトッポッキが定番となり、屋台料理として人気となりました。
韓国風茶碗蒸し (계란찜)
ケランチムのケランは卵、チムは蒸し物のことを指し、韓国の茶碗蒸しになります。トゥッペギに卵液を入れて直火で蒸し上げるので、日本のものとは異なった食感が楽しめます。味付けにアミの塩辛を使うため、塩味の他に旨味も加わります。ケランチムはサイドメニューで人気があるため、お店ではパンチャンの位置づけで出されることが多いです。また家庭ではすぐに作れる料理としてポピュラーなため、おかずの種類を増やしたいときの一皿になります。
キムチ餃子 (김치만두)
朝鮮時代の餃子(マンドゥ)は、料理書の「飲食知味方」によると、そば粉を捏ねて皮にし、細かく切って味をつけた雉と、茹でてつぶした大根と合わせてあんをつくり、皮であんを包んでから茹でて酢醤油で食べたという記述があります。キムチ餃子は白菜キムチが作られるようになってから、登場したもので、歴史はそれほど古くありません。使用するキムチは古漬けのムグンジで、火を通すと酸味が旨味に変化して、抜群に美味しくなります。
韓国かぼちゃ(エホバッ)ナムル (애호박 나물)
黄緑の韓国かぼちゃ(エホパッ)は見た目も奇麗ですが味も上品です。ズッキーニのような形が使いやすく、応用範囲の広さが特長。ナムルばかりではなく、チヂミやジョン、チゲ、蒸し物、餃子の具にも使います。韓国かぼちゃナムルは、アミの塩辛を使うことで旨味と塩味が同時につきます。アミの塩辛がなければ、塩でも大丈夫です。ナムルは単品でそのまま食べてもいいですし、他のナムルと合わせてピビムパッの具材にしてもお勧めです。
シレギナムル (시래기 나물)
江原道(カンウォンド)や山菜が豊富に採れますが、冬が厳しいため、干したもの水で戻して料理に使うことが多いです。全国的にシレギは食べますが、江原道のものは良質。通常は、キムジャンといって、越冬用のキムチ作りの後に、余った大根の葉を湯がいて乾燥させシレギを作りますが、江原道では最初からシレギ用の大根を栽培しています。シレギには、生をそのまま乾燥させたもの、一度湯がいてから乾燥させたものの二種類があります。
大根ナムル (무나물)
一年中出回っている大根ですが、秋の終わりから冬にかけて旬を迎えます。この時季の大根で作ったナムルは、自然の甘味が感じられます。そのまま単品で食べてもいいですし、ピビムパッの具としても合います。またできたてはもちろんのこと、冷めても美味しいです。風邪でのどが苦しい時や消化が出来ない場合、大根ナムルを召し上がってください。大根の成分にはジアスターゼとビタミンCが多く含まれており、風邪や消化に役に立ちます。
煮豆腐 (두부찜)
古くから大豆が栽培されており、三国時代から豆腐があったのではないかと言われています。高麗時代の文学書「牧隠集」には、「野菜と豆腐を一緒に煮ると味が新鮮で、弱った歯にも食べやすく、老人の体に良い」といった記述があり、豆腐チムを思わせる料理が登場します。朝鮮時代に入ると両班の食事に豆腐料理は度々のぼりました。肉食の習慣がないお寺では、タンパク源として豆腐を良く食べるため、豆腐チムは、精進料理としても作られています。
九節板 (구절판)
九節板は真ん中を中心に九つに仕切られた八角形の器であり、料理名としても使われる朝鮮時代から伝わる一品です。中央に小麦粉と水を練って焼いたクレープをおき、その周りに五色入った食材を八種類を盛り付けます。食べるときは、クレープに具材をのせて巻きます。夏はクレープの代わりに、スライスして酢漬けした大根を使うこともあります。九節板は干したイカ、銀杏、干し肉などの乾き物で作られることもあり、おつまみ(アンジュ)としてお酒の席に出されました。
五色串焼き (화양적)
五色の串焼きは、韓国語でファヤンジョク(華陽炙)といいます。炙(ジョク)という漢字は、串焼きを意味し、三国時代前の部族国家時代からジョクという焼き方が存在していました。ファヤンジョクは、五色の材料を味付けして焼いてから串に刺して作ったチヂミの一種ですが、ファヤンジョクは粉や溶き卵をまぶしません。チヂミの材料はいろいろありますが、五色の串焼きは花のように華やかなことから、朝鮮王朝時代の宮中では祭事用の食べ物としてよく使われました。
セリの五色巻き (미나리강회)
セリの五色巻き(ミナリカンフェ)は、陰陽五行説で重要な五色の食材を使い、一口サイズで食べられる宮廷料理。その形が華やかできれいに整っていて、春のやわらかい旬のセリが出た時に作れば一層味覚を引き立ててくれます。宮廷料理でセリを使うときは、葉の部分を全て落として茎だけを使用します。そうすることで、巻物が美しく見えます。カンフェは牛肉の他に、イカで作る場合もあり、酢コチュジャンとの相性がとても良いです。